十分ではないが、前よりはなっている。
これまでいくつかの記事で上肢機能アプローチは「使う手」を目指すための手段だと書きました。
アプローチの結果として病前くらいに麻痺手を使うようになってくれるのが理想ですが、それは難しい。
なぜなら、麻痺は完全に回復することはなく、「使う手」は「麻痺の程度」と相関しているからです。
ここで疑問が浮かびます。
では、いくつかEvidenceを紹介します。

この論文は2007年の調査結果です。少し古いですね。
健常者(Control)は起きている時間に手を動かす頻度が多く、利き手と非利き手の使用時間差はほぼないという結果でした。
健常者はどちらの手も同じくらい(1日9時間)は使用する
この事実は意外に感じませんか。利き手と非利き手は実はほぼ同じくらい生活で使っているんですね。
これを基準として考えていきます。
ではもう一度上の図:右側を見てみましょう。麻痺患者は全く異なる傾向を見せています。
- 24時間、腕に付けた加速度計にて測定した結果
- 非麻痺手と麻痺手の使用時間に大きく差が出た
- 非麻痺手は1日6.0時間使用
- 麻痺手は1日3.3時間使用
- 麻痺手は非麻痺手の使用時間の55%
ポイントとしてはこの論文の麻痺患者たちはARATが25点と中等度麻痺だったことです。
麻痺がある程度残存していれば使う機会も減る。これはみなさんの臨床知とも一致している気がします。
では、次です。

急性脳卒中リハビリテーションにおける上肢運動の量とタイミング:まだ改善の余地がある (tandfonline.com)
この研究は2018年の調査結果です。先ほどの論文の11年後。図の「Everybody(一番右のグラフ)」に着目します。
麻痺手の使用に関する結果としては、
- 7:00~19:00(12時間)で測定。目視で確認
- 非麻痺手を使った時間は38.3%(4.5時間)
- 麻痺手を使った時間は26.4%(3.1時間)
- 麻痺手は非麻痺手の使用時間の69%
この研究の残念な点は、対象者の麻痺の程度が不明ということ。また、先ほどの研究よりも調査時間が半分となっています。そのため、単純な比較はできません。ですが、麻痺手の使用時間は10年前よりも少し上がっているとも解釈できます。
この2つの研究から、私の解釈を書きます。
この10年で麻痺手の使用率は増えているかも
しかし、健常者(1日9時間使用)よりもまだまだ少ない(3時間程度使用)
どこまで増やせばいいのか、という問いが出てきそうですが現段階でその問いに答えるEvidenceは発掘できていません。
麻痺がある程度残存している患者に健常者と同様の使用時間を求めるのは苦痛だとも言えます。
おそらくここに「使う手」を支援するポイントが隠れています。
「使う手」になれば成功という単純な目標ではなく、
「使う」と「幸せ」が一致するところを狙う。その方法については今後考えていこうと思います。