「動く手」になっても △
「使う手」 になれば 〇
度々伝えていますが、上肢機能アプローチの目的は
「動く手」と「使う手」にすること
でした。では、そもそも論です
この疑問に答えるために、幸せという言葉をQOLという概念に置き換えて考えてみます。
私たちは患者が現在の状態よりも良くなった場合、幸せな状態になったと考える癖が付いています。
- FIMが5点上がったから
- FMAが5点上がったから
- BRSのステージが上がったから
- STEFが5点上がったから
- 患者が良くなったと言ったから
しかし、世界の研究者は「当たり前」を疑い、時には価値観を一変する結論を導き出すことがあります。そういった研究を私は
パラダイムシフト論文
と表現しています。上肢機能関連の研究は、パラダイムシフト(価値観・常識を変える)を起こす研究がとても多く、事実が立ち並ぶ柱の隙間を縫うように歩き(EBProcess)、目的地を目指す必要があります。
一般的に考えて上肢機能アプローチによって少しでも麻痺手が「動く」ようになれば、患者のQOLは上がりそうなところです。
では、実際はどうか。以下に興味深い論文を紹介します。

上肢筋力は脳卒中患者の健康関連のQOLに重要な役割を果たしていますか? (tandfonline.com)
この論文では麻痺上肢の筋力が上がることで、QOLは少しだけ上がるという関係性を示しています。少しだけ、というのがポイントです。
では次の論文を紹介します。

とは関連していない。- ティッカー (nih.gov)
この図にあるARATとWMFTというのは、麻痺上肢の機能と動作能力を測定する指標です。この2つの指標の点数が上がることで、QOLの数値も上がるとは言えない、という研究結果です。ARATとQOLには相関関係はなかったそうです。
下の図は同じ研究の結果です。MALとQOLの関係性についての非常に興味深い結果が出ています。

この研究によって、QOLはMALの点数が良くなるのに合わせて上がっていくという相関が明らかになりました。ではMALとは何でしょうか。
MAL=生活での麻痺手の使用頻度・使用の主観的質を測定する指標です。
MALは「使う手」の測定指標と言えるでしょう。ここで、「使う手」とQOLの関係性が見えてきました。
あと2つほど研究を紹介し、みなさんを混乱させたいと思います。

性の評価:系統的レビュー (researchgate.net)
私の方で読解した結果を上記の図にまとめています。強く主張はできませんが、ポイントはCI療法の研究でQOLへの影響が多く示されている点です。CI療法には機能改善と共に麻痺手を「使う手」にするためのアプローチ(TP)が含まれています。
最後に紹介する論文はBTX-A療法(ボツリヌス療法:薬)とCI療法はQOLを改善させるか、というものになります。


この研究の結論としては、BTXもCI療法も論文を合体させて分析したら、QOLの効果は明らかにならなかったということです。
一つ一つの論文では効果を示すものもいくつかありますが、まだ上肢アプローチとQOLに強い関連性があるとは言い切れないと言うことでしょう。
これらの論文を重ね合わせたり、繋ぎ合わせたりすると見えてくる可能性があります。
「使う手」というキーワード。みなさんの中でも外せない概念になってきましたか?
では質問です。
上肢麻痺を呈した患者と健常者では、「使う手」にどれくらい差があるでしょうか。この問いに答えられることで、「使う手」を目指すアプローチの目標設定がしやすくなります。
下記の記事を読んでみてください。
十分ではないが、前よりはなっている。 これまでいくつかの記事で上肢機能アプローチは「使う手」を目指すための手段だと書きました。アプローチの結果として病前くらいに麻痺手を使うようになってくれるのが理想ですが、それは難しい。なぜなら、麻[…]
