動く手戦略③:FMAを用いた治療方針の立て方

まずはFMAについて

今回の記事は治療戦略シリーズの2つめとなります。1つ目は運動麻痺回復ステージ理論を用いたアプローチの戦略について詳しく説明しました。

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さて、FMAは運動麻痺の状態を評価するための指標の一つで現在もっとも使われている指標です。日本ではBRSが他職種との連携にはよく使われていますが、麻痺の回復具合をしっかりと診るときにBRSは使われません。また研究においてもBRSは順序尺度であるため、世界ではほとんどアウトカムに設定されていません。

以下の図を見てください。これは世界の研究で使われる運動麻痺関連の評価指標の使用率を表したものです。

脳卒中リハビリテーション研究で使用される上肢アウトカム尺度:体系的文献レビュー – PMC (nih.gov)

このように圧倒的に世界で使われている「FMA」ですが、これを治療応用していくことが今回の記事の目的です。

よい評価かどうかを決める基準はたくさんあります。内的妥当性・外的妥当性などなど…

これらは評価指標の質を決める一つの側面です。では、別の側面とは何か。それは、
評価結果=治療方針が定まる

評価指標であること。評価と治療が一体化しているような評価指標。それが臨床では理想的な評価指標と言えるでしょう。

FMAの各項目を難易度順に並べかえる

さて次は、このFMAを治療方針に応用するための準備をします。

FMAの評価用紙は色々とありますがそのままでは治療応用できません。なぜなら評価順に並べられているだけだからです。そのためFMAの評価項目をバラバラに分解し、難易度順に並べ変える必要があります。難易度順ということは、回復しやすい順番と言え、超訳すると回復の階層性となるでしょう。

では以下の表を見てください。

Translating measurement findings into rehabilitation practice: An example using Fugl-Meyer Assessment-Upper Extremity with patients following stroke (va.gov)

これが難易度順に並べた表になります。

下に行くほど難易度が低くなっています。もっとも難易度が低いのが「肘の屈曲」でもっとも難しいのが「手関節回し」です。日本語に訳したものを載せておきます。

これでFMAを治療戦略に応用する準備が整いました。

Translating measurement findings into rehabilitation practice: An example using Fugl-Meyer Assessment-Upper Extremity with patients following stroke (va.gov)

FMA難易度表を活用した治療方針の立て方

このままでは階層性が分かりづらいので難易度表を階層分けしてみます。

Translating measurement findings into rehabilitation practice: An example using Fugl-Meyer Assessment-Upper Extremity with patients following stroke (va.gov)

この青い線はRating Scale「0」を目安に私が引いたものです。「1」を基準に引いた場合でもほとんど同じ場所に線が引けると思います。この線を引くことで患者の運動麻痺の程度に応じて次にどんな運動を目指していくのかが定められやすくなります。

活用例

ここからは私の活用方法の紹介になります。FMAの難易度表を用いることでimpairmentレベルの治療方針を定めることができます。

さて、それではどういう流れで治療方針を定めていくのか。

最重症レベルの麻痺があった場合、もっとも低い階層の運動を促通していくことを治療方針とします。そのため、まずは「肩内転・内旋と手指の集団屈曲」となるでしょう。

「(共同運動)」と書かれているのもポイントです。これは共同運動を用いてでも随意性を引き出していくことが重要ということ。正常動作を目指すのはまだまだ先の階層です。そして次の階層へ…

どんな患者に有効か

FMAという評価指標は最重度~軽度麻痺までを網羅しているので、基本的には脳卒中後運動麻痺全般に活用することができます。

また、促通反復療法・課題指向型練習のようなエビデンスがあるアプローチに組み合わせることで、効率的な機能障害の改善を目指せます。


例えば、課題指向型練習において手指の集団屈曲・伸展による「お手玉握り」ができるようになった患者に対しては、「筒握り」の要素を含んだグリップ課題を次のステップとして提供するのがいいかもしれません。

そして、私が特に活用するのは「最重度~重度(0~19点)」の患者です。

なぜなら、最重度~重度麻痺に対する上肢アプローチのEvidenceはほとんどないからです。数少ない論文においても治療方法がロボット療法や経頭蓋直流電気刺激・経頭蓋磁気刺激が多く、ほとんどの病院では実施できません。

そのため私は、電気刺激療法・Arm basis Trainig・促通反復療法・ミラーセラピー、両手運動(連合反応狙いで)などの重度麻痺に効果(小)があるとされるアプローチに組み合わせて、最大限の機能改善を目指しています。

FMAは「バフ」

ここまでFMAを用いたアプローチについて説明してきました。

FMAを用いたアプローチはそれ自体が患者の麻痺を回復させることはできません。あくまで治療のターゲットを定めるためのものです。そのため、アプローチ(EBP)に組み合わせることで力を発揮します。言うならば「バフ(強化)」というやつです。効率的に麻痺を改善させる上での力になるかと思います。